デンソー労働組合

DIALOGUE

農業って環境に良くない?

2023.07.03  

世界のCO2排出量の1/4

なんとなく、農業って環境に良いイメージをお持ちでないですか?光合成をするので、CO2を吸収してくれるという感覚をお持ちの方が多いと思います。しかし、実際は、世界で排出される温室効果ガス490億トン(CO2換算)のうち、農業・林業・その他の土地利用による排出が1/4を占めています。日本では農林水産分野が、全排出量の3.9%、およそ4,747万トンを排出しています。
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/team1-153.pdf

肥料が肝 有機肥料と化学肥料

CO2排出の原因のひとつは、化学肥料にあります。化学肥料の原料となるアンモニアの製造には、輸入に頼っている化石燃料を原料として水素を取り出し、空気中の窒素と反応させる、ハーバー・ボッシュ法が使われています。中学校で習いましたね。輸入時も、製造時もCO2を排出してしまうので、化学肥料だけに頼っていてはCO2を減らすことは難しいです。しかし、このハーバー・ボッシュ法が発明されなければ、全世界の人口のうち30億人は養うことができなくなる、と言われているほど、人類は化学肥料の恩恵を受けています。
https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/25/2210m_nozaki.pdf

では、もう一方の有機肥料に頼ればいいのかというと、なかなか難しい現実があります。まず、有機肥料を使う場合は、土壌に住み着いている微生物の存在が欠かせません。有機肥料は微生物の餌となり、その代謝物が植物にとっての栄養となるため、有機肥料・土壌微生物・代謝物の持続的な循環が必要です。でも、日本では化学肥料を用いる栽培が主であるため、化学肥料で栽培された土壌には微生物がいなくなっている可能性があります。となると、微生物を復活させない限り、有機肥料を使った栽培が実現しません。そのため、有機栽培の土づくりはとても時間がかかると言われています。(通常では3-5年くらいかかります)しかし、農家さんにとっては、そんなに長い間作物が育たないのであれば、収入が減ってしまうために有機栽培に挑戦できないという声もあります。

農林水産省の方針

農林水産省は令和3年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定しました。将来にわたって食料の安定供給を図るために、持続可能な食料システムを構築することが急務となっています。 このため、農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定しました。2050年までに目指す姿として、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量を30%低減すること、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大すること、等が掲げられています。
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/index.html#midorihou

なお、みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業実施計画の認定制度があり、すでにイノベーションを生み出すために、いくつかのスタートアップが認定されています。
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/221130.html

私たちにできることは安さ以外の価値を求めること

有機肥料を使うことは、環境に良いことを説明してきました。ただ、農家さんとしては土づくりに時間がかかることもあり、また、栽培自体にも手間がかかることから、有機栽培の野菜は単価が高くなる傾向があります。スーパーでも有機野菜のスペースはとても狭く、あまり大量には売られていません。どうしても、価格が安い野菜を選んでいる方も多いと思います。ただ最近、野菜の価格がぐっと上がったタイミングがありました。世界情勢の影響を受け、輸入に頼っていた化学肥料のコストが上がったことから、野菜の価格も上がっていました。
https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/220729.html

もし輸入がストップしてしまったら、と考えると恐怖を覚えます。さらにこの先、私たちの子どもの代、孫の代でも、日本でおいしい野菜を食べていてほしいと願うのであれば、目先の価格だけではなく、どのような背景で栽培された野菜なのか、という視点で自ら選択していってもいいのかもしれませんね。
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